会社設立に至った経緯
私は、2007年より訪問看護ステーションに入職し、それから14年間訪問看護の経験を積みました。入職当時3人の子供がまだ小さく、家庭と両立しやすい点だけで訪問看護を選びました。しかし、病院看護時代にきちんと学んでこなかった私には、訪問看護の仕事の幅が広すぎて、戸惑い、うまく学習が進みませんでした。その後、大きな引っかかりの経験をします。それは、入職10か月、脳幹梗塞後の新規利用者を担当し、その3か月後、利用者に仙骨部褥瘡が発生したことでした。その方は肺炎を繰り返し、大きな褥瘡を抱えたまま亡くなりました。私が担当でなければこんなことにならなかった、私の責任だと思いました。当時は必死で、先輩や上司、医師に相談しましたが、解決の糸口は見つかりませんでした。しかし、褥瘡を治すための、もっと専門的な知識や技術があるはずだと感じていました。それからの私は、人が変わったように褥瘡ケアの勉強をしました。私が専門的知識を身につけて、同じように困っている新人訪問看護師の助けになりたいと思いました。この経験が私の仕事活動の原点となっています。
それから、皮膚・排泄ケア認定看護師を取得し、自施設の褥瘡有病率低下への取り組みや、東京都教育ステーションのコンサルテーション事業を活用し、外部の訪問看護ステーションの褥瘡やストーマの困難事例の相談を受け、コンサルテーションをたくさん経験させていただきました。
2017年からは、当時在職ステーションのサテライト事業所の管理者を務めました。しかし、管理者としてどのようにスタッフへ教育したらよいのか、様々な倫理的課題に自身が管理者としてどのように立ち振る舞うべきかよくわからず、無力感に襲われ、看護系大学院の進学を決意し、在宅看護専門看護師資格を取得しました。
私自身は、訪問看護はとてもやりがいのある仕事だと思います。自分の勉強したことが、直実践につながる喜びは、病院では経験できませんでした。しかし、一緒に働いた多くの訪問看護師が心身の不調を訴え離職していきました。なぜ、就業が継続できなくなるのか、どうしたら訪問看護師一人一人が生き生きと仕事を続けていくことができるのか、自分にそのような訪問看護ステーションが作れないのかと思ったのが、次の経営学大学院への進学のきっかけとなりました。
経営学の大学院で取り組んだ研究は、訪問看護師の人材定着の課題についてです。調査では、21名の訪問看護師さんに、管理者による人材育成の難しさや、訪問看護師が直面する実践上の困難についてお話いただきました。その調査からの気づきは、管理者は看護師として尊敬される存在であること、認定看護師等の高度実践者からの教育効果があること、上司や同僚からの情緒的サポートが得られることは、仕事上のストレスを緩和するのに役立ちました。一方で、訪問看護師の学習が進むのは、周囲からのサポートによるという証拠は得られず、自身の失敗経験によるものが大きいこともわかりました。やはり、個々の訪問看護師が、難しいと感じる事例も経験して、うまくいかない経験をすることも看護師としての成長には必要です。組織は訪問看護師の失敗はチャンスと捉え、その経験と成長を評価できる環境づくりが大切であると感じているところです。
しかし、多くの訪問看護ステーションの管理者は、経営・管理・訪問業務に追われる中で、様々な葛藤のなか、訪問看護師の指導・教育を担っており、もっと管理者へのサポートが必要であることも示唆されています。そこで、訪問看護ステーションの管理者や、人材育成や教育体制に課題を感じている法人経営者の方々へのサポート事業に取り組むことにしました。
是非、私の訪問看護の実践経験と、これまで身に着けた知識をご活用いただき、訪問看護師の皆さんがもう少し楽に学習が進み、訪問看護の仕事を楽しく続けていけるようにサポートさせてください。
訪問看護まなびサポート株式会社 代表者 瀧井 望